「ゴミ屋敷」という現象は、単なる個人の問題として片付けられるものではなく、その背景に「現代社会の消費行動の歴史的変遷」が深く関係していると考えられます。物が大量生産・大量消費されるようになった時代から、情報過多の現代に至るまで、私たちの消費行動がどのように変化し、それがゴミ屋敷という形で現れるようになったのかを歴史的に探ることで、問題の根源を理解するヒントが得られます。日本の消費行動は、戦後の高度経済成長期を経て大きく変貌しました。1960年代から70年代にかけて、「三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)」に代表される耐久消費財の普及が進み、国民の生活は豊かになりました。物が豊富に手に入るようになったことで、「もったいない」という意識は希薄になり、古い物を捨てることへの抵抗感が薄れていきました。しかし、この時期はまだゴミ屋敷という言葉が一般的に使われることはありませんでした。1980年代のバブル経済期には、消費はさらに加速し、ブランド品や高価な嗜好品など、精神的な満足感を求める消費が増加しました。この時期は、物を「所有すること」自体が価値を持つという意識が強まり、必要以上に物を買い込む傾向が見られるようになります。しかし、バブル崩壊後、経済の停滞期に入ると、消費行動は再び変化します。1990年代以降の「デフレ経済」と「情報化社会」の進展は、ゴミ屋敷問題の深刻化に大きく影響したと考えられます。物が安価に手に入るようになったことで、使い捨て文化がさらに加速しました。また、インターネットの普及により、情報過多の時代となり、広告やプロモーションに煽られて、必要のない物を衝動的に購入してしまう「衝動買い」が増加しました。そして、物を捨てることに対する罪悪感や、いつか使うかもしれないという不安から、物を手放せなくなる「溜め込み癖」が、社会全体で顕著に見られるようになるのです。特に2000年代以降の「高齢化」と「核家族化」の進行は、この消費行動の変化と相まって、ゴミ屋敷問題をさらに深刻化させました。高齢者が一人暮らしをする中で、物を買い込む一方で、身体的な衰えから片付けができなくなり、溜め込み癖が進行するケースが増加しました。また、インターネット通販の普及も、家にいながらにして物が簡単に手に入るようになったため、ゴミ屋敷化を加速させる要因の一つとなっています。