「ゴミ屋敷」という現象は、日本固有のものではなく、世界各国、そして人類の「歴史」の中で様々な形で存在してきました。特に、物を過剰に溜め込む行動は、心理学の分野では「ホーディング(Hoarding)」と呼ばれ、その概念は古くから研究されてきました。世界の歴史の中に、どのようなホーディングの事例が見られるのか、ゴミ屋敷の普遍性を探ります。西洋の歴史においては、中世ヨーロッパの貴族や富裕層の中にも、珍しい品物や美術品を異常に収集する「蒐集癖(コレクション癖)」を持つ人物がいたことが記録されています。彼らの多くは、単なる趣味の範疇を超え、自宅を所蔵品で埋め尽くしてしまうことがありました。これは現代のゴミ屋敷とは異なる文脈で語られますが、物を過剰に溜め込むという行動様式の一端を垣間見ることができます。また、19世紀から20世紀初頭にかけての産業革命以降、物の生産と消費が拡大したことで、ホーディングはより顕著な社会現象として認識されるようになります。特に、経済的な不況期には、「もったいない」という意識や、将来への不安から、物を手放せない人が増えたと考えられます。アメリカでは、1940年代から50年代にかけて、動物を異常に溜め込む「アニマルホーディング」の問題が表面化し始め、公衆衛生上の課題として認識されるようになります。心理学の分野では、20世紀後半に入り、ホーディングが強迫性障害の一種として研究されるようになります。これは、単なる「だらしなさ」ではなく、物を捨てられないことへの強い苦痛や不安、衝動的な行動が伴う精神疾患として捉えられるようになりました。特に、2013年には、アメリカ精神医学会が発行する『精神疾患の診断・統計マニュアル』(DSM-5)において、「ホーディング障害」が独立した診断基準として認められたことで、この問題に対する社会の認識は大きく変化しました。海外のメディアでも、長年にわたりゴミ屋敷(ホーディングハウス)の問題がドキュメンタリー番組などで頻繁に取り上げられてきました。アメリカのリアリティ番組「Hoarders」などは、ホーディング障害を抱える人々の生活と、その片付けの様子を克明に映し出し、世界中で大きな反響を呼びました。このように、ゴミ屋敷という現象は、文化や時代を超えて普遍的に存在し、その背景には人間の心理や社会経済的な要因が深く絡み合っています。
海外にもあったゴミ屋敷?世界の歴史に見るホ―ディング